今朝、起きて下の部屋に行ったら、父の髪がさっぱり短くなっていました。
「え?美容院、行けたの?」
「美容院、行ったみたいにさっぱりしたろ?」
今朝、父が起きたら枕に、ごっそり髪が抜け落ちていたそうです。
「朝から母さんと二人でこれだけ拾ったんだよ」、とゴミ箱を見せてくれました。
真っ黒の短い毛が、仔猫1匹分くらいの塊になってありました。
「抗がん剤って、ホントに髪の毛抜けるんだね~、でもさっぱりしてていいじゃん!」
抗がん剤の副作用で知ってはいたけれど、こんなに急に、こんなにごっそり抜けるんだと。
昨日は3回目の抗がん剤点滴の日でした。
車で迎えにいって、点滴を終えた父と病院で合流したときに、いつものトレードマークの帽子の脇に抜け毛があったので「ちょっと、髪の毛ついてるよ」と、2本ほど取ってあげたんです。
3時間かかるフルコースの抗がん剤点滴のあとは、普通にわりと元気でお昼ごはんも、夕飯もそこそこ食べられて、身体が冷えてるからと久しぶりに湯船にもつかってました。
最近はしんどさでシャワーだけで済ませていたので、あ、調子いいんだなと。
夕方になって、母と二人で大好きな韓流ドラマを観ている時間なのに、やたらと二人の話声が聞こえてきたので下に見に行ってみたら、今朝はまだ残っていた後頭部あたりの黒髪がなくなってました。
「またさっぱりしたろ?」
背骨沿いの首のすぐ上と両耳のこめかみ部分に斑に黒髪が残っていたので
「この辺だけ黒くて目立つから抜けないの?」と、
「引っ張れば抜けると思うけど、変なら抜いてよ」と。
正面から見れば、短めに刈り込んだ感じでさっぱりしてるけど、違和感の残るこめかみと後頭部の黒髪を軽く手櫛ですくと軽い力でスルスルと髪が抜けました。
ちょっと整える感じにして、肩や首に落ちてしまった髪の毛と拾ってたら、
「コロコロの替えある?」
買い置きがあったのですぐに持ってきて、父の服と、布団の周りと粘着シート(通称コロコロ)でコロコロやってるとすぐに髪の毛でいっぱいになりました。
「きれいになったよ~」
「手、洗ってこい。」
促されて台所で手を洗い始めた途端に涙が出そうになりました。
父はカッコつけです。
後期高齢者ですが、若干の白髪交じりでもふさふさの黒髪で若く見られることが自慢でした。
見ている私がこんなにショックなんです。
本人は「美容院に行く手間が省けた」と和やかに言っていますが、本当はどんな気持ちなんだろうと。
93%の確率で髪が抜ける、そう抗がん剤のしおりには書いてありましたが、残りの7%かもしれないじゃん。
以前、そういってしまっていた自分をぶん殴りたいです。
先週はやはり副作用のせいか、連日しんどそうで、父も「入院したほうが楽かな」といっていましたが、コロナ禍の今、入院したら面会に行けません。
好きなテレビもBS放送も観れなくなるし、好きな時に好きなものを食べられなくなるし、朝6時起床で夜9時消灯だよ?テレビもイヤホンだし、昔みたいに看護師さんはしょっちゅう切れくれないし、面会に行けないからパジャマは自分で洗濯かリースのパジャマになっちゃうよ?猫たちにも会えないし、食事もまずいよ?食べられなかったら点滴が増えるんだよ?と。
「それは無理だ・・・。」と諦めてくれました。
父がステージⅣの胃癌とわかってから、泣きたいのに泣けません。
ふとすると、悪いほうに悪いほうに考えが行ってしまいます。
父の胃に変なものが写っているとわかってから、まだひと月とちょっとです。
先は見えません。終わりは見えなくていいです。
でも、時々、逃げ出したくなります。
逃げる場所なんてないのにね。
願わくば、これ以上、父が辛くなりませんように。